問われる骨太の存在意義 世界規模の構造変化に対応できるか

臨時閣議に臨む(左から)茂木敏充外務相、菅義偉首相、麻生太郎副総理兼財務相=18日午後、首相官邸(春名中撮影)
臨時閣議に臨む(左から)茂木敏充外務相、菅義偉首相、麻生太郎副総理兼財務相=18日午後、首相官邸(春名中撮影)

菅義偉(すが・よしひで)政権が初めて策定した経済財政運営の指針「骨太の方針」は、新型コロナウイルス収束後の経済成長に力点を置いている。ただ、中長期的課題から今すぐ着手すべきコロナ対策まで多様な施策が盛り込まれ、各省庁が財源の確保を目指す政策をバラバラに持ち寄った印象も強い。官邸主導で国家戦略を打ち出す骨太の存在意義は薄れ、世界規模の構造変化に対応できるのか心許ない。

骨太では「次なる時代をリードする新たな成長の源泉」として脱炭素化やデジタル化など4分野を明示した。いずれもコロナ禍で改めて浮き彫りになった課題であり、経済成長に向け克服する必要がある。子育て施策の司令塔「こども庁」の創設など秋の衆院解散・総選挙に向け〝菅カラー〟を打ち出す思惑も見える。

だが、「長年の課題に答えを出す」(首相)だけで目の前の大変革期を乗り切れるか。脱炭素化は9年後に迫る2030(令和12)年度の目標を大幅に引き上げながら、原発を「最大限活用」するとの文言は削除し、企業の投資促進も従来の補助金や税制支援の延長線にとどまる。コロナ対策では昨冬の感染爆発を踏まえた民間病院の病床活用などを盛り込んだが、これなど年末の令和4年度予算編成を待たずに今すぐ対応すべきことだ。

個別施策で実績を重ねようと狙うのが菅政権の特徴的な手法だが、過去の宿題返しに終始しては総花的になりがちだ。よるべき明確な国家像を語れなければ攻めの戦略は打ち出せない。

骨太では今後、経済財政諮問会議に調査会を設置してあるべき経済社会の基本的考え方を明らかにすると明記したが、本来それは策定前に詰める話だろう。コロナ対策の遅れで景気回復は米国などに比べ既に半年遅れた。米中対立の激化など加速度的な構造変化に対応するため、骨太の役割をもう一度問い直すべきだ。

(田辺裕晶)

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