銀行経営陣への女性登用の拡大促す 欧州中銀が指針案
【ベルリン=石川潤】欧州中央銀行(ECB)の銀行監督委員会は15日、欧州の大手銀行の経営陣にもっと女性の登用を促す新たな指針案を公表した。欧州の金融機関で女性の最高経営責任者(CEO)はわずか8%、大手行の経営陣でも約5人に1人にとどまっている。健全な経営に必要な多様性を確保するうえでも、女性登用拡大は待ったなしと判断した。
具体的には、ECBが銀行の経営陣が全体として適切かどうかを評価する際の指針を改定する方針だ。今後は知識や技能、経験だけでなく、性別の面で経営陣が多様性を満たしているかを注視する。銀行に対して、多様性についての目標を持っているか、それを達成しているかを確認し、未達の場合には修正を勧告する。強制的な手段の行使も辞さない構えだ。
ECBが女性登用を促すのは、経営陣の多様性が効率的な経営に不可欠と考えているためだ。経営陣が多様であることは、様々な考えを持つ株主や社員、顧客と向き合ううえでもプラスに働き、銀行の成長にもつながるとみている。
欧州の銀行では女性の登用が増えているが「進展はまだあまりにも遅い」というのがECBの見方だ。監督官庁の使命のひとつとして、経営陣や銀行自体の多様性を促すために具体的な一歩を踏み出すことにした。
米ウォール街では、シティグループで2月にジェーン・フレーザー氏がCEOに就任し、米大手銀初の女性トップが誕生した。JPモルガン・チェースも次期CEOの有力候補に女性幹部の名前が挙がる。遅れていた欧州でも、ドイツで大手企業が最低1人の女性を経営陣に加えるように義務づける方向になるなど、女性登用の動きが加速しつつある。
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