G7対中議論 日本期待もジレンマ

11日、G7サミットの記念撮影を終え、笑顔を見せる菅義偉首相(中央)。前列左はバイデン米大統領、同右は英国のジョンソン首相 =英コーンウォール(代表撮影・共同)
11日、G7サミットの記念撮影を終え、笑顔を見せる菅義偉首相(中央)。前列左はバイデン米大統領、同右は英国のジョンソン首相 =英コーンウォール(代表撮影・共同)

12日の先進7カ国首脳会議(G7サミット)で各国首脳が対中政策で連携する姿を示し、日本としては歓迎すべき機会となった。日本は尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺での領海侵入や台湾有事への懸念など安全保障上の脅威に直面しており、中国の行動を止めるため価値観を共有する西側諸国と認識を擦り合わせ、連携することを外交方針としてきた。一方で、日本は人権問題などをめぐって欧米各国と温度差があるほか、中国とは経済関係も深く、ジレンマも抱えている。

中国が東・南シナ海への強引な進出や、途上国への影響力拡大を図る中、安倍晋三前首相はこれまでのG7で中国問題を粘り強く提起してきた。今回、中国問題が中心議題となったことは「欧州も日本の考えに近づいてきた」(外務省幹部)結果だといえる。

一方、中国は日本にとって最大の貿易相手国で、日系企業の海外拠点数でも中国が最も多い。欧米諸国と比べて経済的な結びつきが強く、米国のように幅広い分野で経済のデカップリング(切り離し)を実現するのは難しい。

中国による新疆ウイグル自治区の人権弾圧などについては、G7各国が制裁に踏み切る中、制裁を行わない日本の対応が際立つ。日本政府は対話で相手国の行動を改めさせる外交を重視しており、外務省関係者は「日本の方針は欧米にも理解されている」と語る。

ただ、米税関当局はウイグルの強制労働に関する米国の輸入禁止措置に違反したとして「ユニクロ」の衣料の輸入を差し止めた。日本企業の中国展開リスクを含め、人権問題を傍観できない現実が浮き彫りになっている。

政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて延期した中国の習近平国家主席の国賓来日について年内は見送る方向だ。ただ、来年は日中国交正常化50周年にあたるほか、北京冬季五輪も予定され、日中要人の往来も想定される。米国では北京五輪ボイコット論が浮上しているだけに、日本政府は判断を迫られる。

もっとも、バイデン政権も中国を「唯一の競争相手」と位置付ける一方、気候変動問題などでは協力を模索する。外務省幹部は「(米中は)冷戦時代の米ソとは違う。日中も是々非々で、是々非々の『非』はG7で連携して中国に再考を促すことが大事だ」と強調する。(コーンウォール 田村龍彦)

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