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チョウやアリ、ゴキブリなど身近にいる昆虫。気持ち悪がられ、駆除されることも多い彼らだが、5億年前から様々な天変地異や気候変動を乗り越えてきたつわもので、生き抜くための驚くべき能力を持っている。コロナ禍で社会が激変する中、昆虫に「生きる知恵」を学んでみるのはいかがだろうか。
抗菌・清潔、ハキリアリの「感染対策」
「感染対策ならハキリアリがすごい」。こう断言するのは、九州大の村上貴弘准教授だ。中米などに生息し、葉っぱを切って巣に運ぶ姿で知られる。
ハキリアリは、巣に入る前に体の汚れを落とす。巣も清潔で、ゴミは一番遠い部屋に集める。体表には抗生物質を出す菌が共生し、自らも抗菌作用のある体液を分泌するという。
感染症を防ぐには、手洗いや消毒が大事だ。家の中を整理整頓し、ゴミが散らからないようにするのも広い意味での感染対策だろう。ハキリアリに負けないように励行したい。
もし、病原体に感染してしまったときは……。米国の研究によると、養蜂に使われるセイヨウミツバチは、感染症にかかった幼虫に気づくと、速やかに体を振動させて発熱し、巣の中の病原体を撃退するという。
人間でも発熱は病原体と戦うための重要な免疫の働きだ。それに加え、医療機関を受診するなど早期の対策が大切になる。
隕石の衝突や寒冷化の試練を乗り越えた
昆虫は、名前がついているものだけで約100万種。人間を含む哺乳類の約5500種と比べ桁違いの多様性を持つ。
昆虫の祖先は5億年前に誕生したとされ、恐竜を絶滅させた
玉川大の小野正人教授の研究によると、キアシナガバチは台風や天敵のスズメバチの攻撃などで巣が壊れると、生き延びた働きバチが別の巣の一員として受け入れられ、巣を守ったり、子孫を残すチャンスを得たりする。いざという時、近所の人や地域同士が助け合う姿に重なる。
また、アリの集団には、一定割合で「働かない」働きアリがいることが知られている。無駄なようだが、全員が常に働くよりも巣が存続する確率は高いという。何か事故があったときの交代要員となるからだ。北海道大の長谷川英祐准教授は、「組織でも、短期的な効率の追求が正解ではない」と戒める。
ヤエヤマツダナナフシの卵は水に浮かび、海流に乗って分布を広げる。先が見えない時代でも、チャンスをつかむには、外に飛び出す勇気が必要かも。虫の生態から人生を学ぶエッセー本「もしも虫と話せたら」(プレジデント社)を監修した昆虫研究家の須田研司さんは、「自由な発想で、生き方のヒントを考えるのもいい」と話す。