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無料通信アプリ大手LINEの情報保護問題を巡り、親会社のZホールディングス(HD)が設置した有識者らによる特別委員会が11日、1次報告書を公表した。LINEが、利用者の画像や動画を韓国で保管していたにもかかわらず、政府に対し実態と異なる説明をしていたことを明らかにした。対外的に正確な情報開示を軽視してきた企業体質が問われそうだ。
報告書によると、LINEは2013年の社内の検討で、対外的に「主要な個人情報は日本のデータセンターに保管」と説明することとしていた。15、18年の検討でも同様だった。担当者が中央省庁や地方自治体に対し、「データは日本に閉じている」などと話していたことも判明した。実際には、利用者の画像や動画のデータは韓国内のサーバーで保管していた。
11日にオンラインで記者会見した特別委座長の宍戸常寿・東大教授は「利用者のデータの取り扱いが、開発・サービス側の目線からとらえる傾向があった」と指摘した。
一連の問題が発覚した3月に公表したデータの移転計画で、正確な情報開示をしていなかった点も問題視した。
LINEは3月、メッセージをやりとりする「トーク」内の画像や動画のデータを6月までに国内に移転する計画を公表した。しかし、有効期限なく画像を保管できるサービス「アルバム」のデータは、情報量が膨大で作業が長期化するため、移転が2024年前半までかかることは公表していなかった。
報告書は「正確な情報提供を目指す意識に欠如がある」と断じた。宍戸氏は「遅れるなら3月時点で説明すればよかった。利用者目線が欠けている」と批判した。
報告書は、利用者情報が中国から閲覧可能だった問題については、「経済安全保障に関する社内の感度が必要だった」と指摘した。中国で国の情報活動に企業や国民が協力するよう義務付ける国家情報法が17年に施行されたにもかかわらず、体制を見直していなかった。
今回の報告書は第1次の位置づけだ。特別委は今後、対外的に虚偽説明をしたり、正確な情報を示す姿勢が欠けていたりした企業体質の構造的な問題について調査を続ける。今秋にも最終的な報告書をまとめる方針だ。
一方、LINEは11日、サービスごとのデータ国内移転が完了する時期を公表した。キャッシュレス決済「LINEペイ」の取引情報などは今年9月に、ネット通販「LINEショッピング」の購入データなどは同10月に移転完了予定としている。