電動キックボードで暮らしが変わる。
ちょっと想像してみてください。往復で徒歩20分以上かけて通勤しているみなさん、駅と家の間を電動キックボードで移動できたら時短だし、密回避できるし、めちゃくちゃ楽しそうじゃないですか?
先日、電動マイクロモビリティのシェアアプリ「LUUP」に、新しく電動キックボードが導入されました。ヘルメットをかぶらず電動キックボードで走行する認定がされたのは、LUUPが国内初。まずはギズ編集部のトダが颯爽と乗りこなす姿をご覧ください。
こがなくていいので、スカートやスーツ姿でそのまま乗れちゃうのも気軽に楽しめるポイント。その乗りやすさから、電動キックボードは世界で唯一普及しているマイクロモビリティと言われています。フランス、シンガポール、アメリカやイギリスなどではすでに人気みたいですが、日本ではまだあまり見かけないのはどうしてなんだろう?
そこらへんが気になったので、LUUPを展開している株式会社Luupへ取材に行ってきました!
マイクロモビリティってなにがいいの?
マイクロモビリティとは、電動キックボード・電動アシスト自転車・電動バイクなど、クルマよりちっちゃくて小回りが利く乗り物の総称です。
メリットとして、電動なのでガソリン車に比べると環境性能に優れています。また、公共交通機関の最寄り駅〜自宅や会社まで=「ラストワンマイル」の移動手段としても活躍。電車やバスに乗らなければ、コロナ禍においての三密回避にもなりますよね。
乗りやすい設計
今回シェアアプリ「LUUP」内に新しく導入された電動キックボードは、「歩くとちょっとしんどい」と感じる徒歩10〜15分程度の移動に適しているそうです。
車体が路面に近い設計となっているため、「あぶない!」と思ったらすぐに足をついて止まることができます。
ヘッドライト、ブレーキ、方向指示器、バックミラーとナンバープレートも付いています。あと、スマートフォンをガッチリ留めておけるホルダーも備え付け。
現行法上は「原付」
ちょっと小難しい話になりますが、実は電動キックボードって、日本の道路交通法上は「2輪、排気量50cc以下のスクーター」と同じ「原付(原動機付自転車)」に分類されます。
そのため、本来ならばヘルメットの着用はマスト。日本で電動キックボードをあまり見かけないのは、道路交通法などがネックになっていたところもありそうだなという印象です。
ただ、2019年11月に電動キックボードが「規制のサンドボックス制度※」のモビリティ分野に認定されてからは、規制の適正化とルールづくりに向けての実証実験が進められており、2021年4月23日より、認定を受けた事業者のヘルメット着用は「任意」となっているのです。(※革新的なサービスを事業化させる目的で、地域や期間を限定したかたちで規制を緩和する制度)
ただ、実証実験としてヘルメットの着用が「任意」であると同時に、LUUPの電動キックボードは最高速度が時速15kmに制限されています。そして、運転免許証の帯同(普通自動車第一種)が必須です。
(※ちなみに、ヘルメットの着用が任意であることや最高時速が15kmに設定されていることなどは、実証実験後の正式リリース時には変更の可能性もあるとのこと)
電動キックボードの乗り方
1. 利き足を前にしてキックボードに乗せる。反対の足で地面を蹴って初速をつけ、両足をキックボードに乗せる。
2. アクセルのレバーをゆっくり押すと加速開始。この時、アクセルを一気に押すといきなり最高速度(時速15km)まで加速してしまうので要注意!
3. カーブを曲がりたい時はハンドルを進みたい方向へ曲げ、必要ならば足で地面を蹴る。
4. 止まる時はあらかじめ数十メートル手前で減速し始める。両サイドのブレーキをゆるやかに押しながら減速を続け、完全に停止するとともに利き足ではない方の足を地面につける。
実際に乗ってみると…
なにこれ楽しーーーい!!!
キックボード系の乗り物が苦手な筆者でもすぐに慣れました。最初は思ったよりもハンドルが軽く、グラついて戸惑いましたが、車体の重量が25kgあるので走り始めてしまえば安定するし、無駄にハンドルを動かさなければグラつくことはありません。マックスでも時速15kmなので危険を察したらすぐ止まれるぐらいのスピードで、恐怖感はありませんでした。
立ち乗りしているぶん、車や自転車に乗っている時よりも目線が上がり、街並みが視覚的に縦の方向にのばされて普段とは違った立体感を感じました。さらに、風を直に受けながら身ひとつで移動しているので、ものすごく自由な気分!
どこで乗れるの?
現在LUUPは東京都と大阪府で実証実験中です。利用料金は初乗り(10分)110円で、それ以降は1分ごとに16.5円が加算されます。
東京都内には新宿区・品川区・世田谷区・港区・目黒区に約300ヶ所のLUUPポートが設置されており(うち約200ポートで電動キックボードが利用可能)、大阪府内では梅田・難波・天王寺で80ポートが設置。これからも増やしていく予定だそうです。
ご覧のとおり、LUUPポートはとってもコンパクト。見つけるのにちょっと苦労するぐらいです。このコンパクトさがポートの密度の高さを高めているのも大きなポイントで、利用者の「ちょっとそこまで」需要にきめ細かく対応しています。
乗車の手続きはすべてアプリ内で
LUUPの電動キックボードに乗るには、まずスマートフォンにLUUPアプリをインストールし、会員登録をします。その際、クレジットカード情報を入力し、運転免許証の画像をアップロードする必要があります。さらに、アプリ内で道路交通法テストを受けて、全問正解しないと電動キックボードを利用できません。
無事テストをクリアできたら、出発したいポートをアプリ内の地図から選びます。
ポートを選択すると、機体の利用状況と電池残量が確認できます。迷子になりがちな人にはありがたい詳細な写真や道案内も。
スマホを機体のQRコードにかざすと電動キックボードのロックが解除され、ライトが点灯し、速度計とバッテリー残量が表示されます。アプリ内で、到着予定のポートを設定して、ハンドルバーにスマートフォンを固定する場所があるので落ちないようにガッチリと取り付けたら、いざ出陣ッ!
走行中に注意することは?
・歩道の走行は禁止。降りて押すのはOK。
・車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左端を進む。
・自転車レーンが設置されている道路ではレーン内を進む。
・二段階右折は禁止。車の流れをよくみつつ、注意しながら信号に従って進む。
・車両の走行が著しく多い道路は、安全性を鑑み自主的に走行禁止道路となっているので注意!
・駐停車中の車両には要注意!車に比べて速度が遅いので、迂回する場合は必ず前後確認し、早めの行動を心がける。
新宿から渋谷までおよそ35分。利用料金は522円でした。
あらかじめ到着地として設定したポート内に停車した電動キックボードの写真をアプリ内でアップロードすれば、返却手続きは完了です。
電動キックボードは返却待ちしてみる
LUUPの電動モビリティは、いま人気急上昇中。特に電動キックボードはあまりのニーズに、ポートをいくつか回っても、その間に機体に乗られてしまうことも。そういう時は、なるべくキャパの大きいLUUPポートを選んで、そこで機体が返却されるまでじっと待つのが得策です。
人気の秘訣は乗りやすさでしょうか、もしくは一人乗りのマイクロモビリティが提供してくれる自由さでしょうか?
東京都内って割と狭いエリア内にいろんなスポットが混在しているんですよね。その間をLUUPのようなパーソナルな移動手段を使いながら、距離を移動すると同時に異なるライフスタイルの間を行き来するっていう感覚が、個人的にはとても新鮮でした。
LUUPは更なる実証実験を経て、2023年までには全国展開を目指しているそうです。実証実験中のみんなの乗り方次第で、電動キックボードに関する法整備が進んで、規制緩和も実現するかも! そうなれば、あなたの街に電動キックボードが来る日もそう遠くないかもしれません。
乗車の際にはくれぐれも道路交通法を順守して、安全なライドをお楽しみくださいね。
Reference: Luup, 村山慶輔『観光再生 サステナブルな地域をつくる28のキーワード』(プレジデント社、2020年)