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新型コロナウイルスの感染拡大で一躍有名になった、疫病封じをするという妖怪「アマビエ」。江戸時代の瓦版に描かれたアマビエを模写して民衆に配られたとみられる札が、世界遺産・平等院(京都府宇治市)内の
アマビエは、江戸時代末期の1846年、肥後国(熊本県)の海に出現したと伝わる妖怪。京都大付属図書館が所蔵する瓦版には、うろこに覆われたような胴体と、3本のひれを持つ姿が描かれ、「今年から6年間は豊作になる。だが病がはやる。私を写し、人々に見せよ」と告げた、と記されている。
平等院の神居文彰住職(58)が昨年1月頃、塔頭・浄土院の所蔵庫を整理していた際、「疫病退散 尼比恵」と書かれた封筒の中にある札を発見。コロナ禍で全国的にアマビエが知られるようになった同年6月頃に、「少しでも人々の不安が和らいでほしい」との思いで、
妖怪研究家の湯本豪一さん(70)(東京都在住)によると、これまで山口県や福井県で人間やサルの姿をした同種の妖怪を描いた史料は見つかっていたが、瓦版を写したとみられる札が発見されるのは珍しいという。湯本さんは「ここまで瓦版に酷似したものは見たことがない。当時も様々な疫病がはやっており、今のような社会不安があったのだろう」と指摘する。
神居住職は「明治時代に住職が保管していた札かもしれない。こんなに貴重なものとは思っていなかったので驚いている。しっかりと後世に残し、伝えていきたい」と話している。