終盤の逆転劇でヤクルトが巨人を下した。日刊スポーツ評論家の宮本慎也氏(50)は、7回の巨人の攻撃を潮目と指摘した。

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試合には“流れ”がある。勝敗を決める一番のポイントだと思っているし、接戦になればなるほど重要度は増してくる。3-1でリードしていた巨人にとって、ヤクルトに“流れ”を向けてしまったのが、7回裏の攻撃だった。

先頭打者の大城が右前打。代走のスペシャリスト、増田大を送り、投手の打席には代打松原。手堅く送りバントでも悪くはないが、ヤクルトの投手は金久保で、クイックが苦手なタイプ。6回裏に走者を出したときでも、クイックのタイムは1秒3前後。足の速い選手なら、ほぼ確実に走れる投手だった。

初球は捕手中村が外角に外し気味に構え、真っすぐを要求。サインを見てすぐに投げたため、走りにくかったのは分かるが、それでもクイックのタイムは1秒31。2球目も同じ外角の真っすぐで、打者の松原は見逃してストライク。そして3球目の甘いフォークで増田大はスタートを切ったが、松原は打ちに出て最悪のセカンド併殺。“流れ”を変えた。

まず、金久保がクイックが遅いのは分かっていたはず。特に目いっぱいのクイックをしてくる初球のタイムが遅いのだから、初球に走れなかったのは百歩譲っても、2球目には走らなければいけない。打席の松原にしても、2球目の真っすぐを打たなかったのは走るのを待っていたのかもしれないが、3球目のフォークは見逃してもいい。1ストライクを取られていただけに、打ちたくなる気持ちは分かる。しかし変化球なら、かなりの確率で盗塁は成功した。追い込まれて三振したとしても送りバントをしたのと同じ結果だし、見逃した後、進塁打が打てれば追加点を取れる確率はグッと上がった。

走れる投手を相手に、1ストライクを取られるまで待つのはセオリーでもある。しかし2球目のストライクゾーンの真っすぐなら打ってよかったし、逆に1ストライクを取られた後でも、変化球なら待つべき。単純なセオリーというより、1つ高いレベルのセオリーになるが、代走のスペシャリストなら走らなければいけないし、松原にしてもレギュラーを獲得するためにはクリアしてほしいレベルのプレー。この併殺で“流れ”がヤクルトに傾き、予感通りの逆転負け。悔やまれるプレーになった。(日刊スポーツ評論家)