今年デビュー10年目の女優上白石萌歌(21)が、WOWOWの連続ドラマW「ソロモンの偽証」(今秋放送、配信スタート)で連ドラ初主演を果たす。このほど都内で、日刊スポーツなどの取材に応じた。
学校内での生徒の不可解な転落死と、真実を求める同級生らによる学校内裁判を描いた。宮部みゆき氏の傑作ミステリーが原作で、15年には映画化された。原作、映画では中学校が舞台だったが、ドラマでは高校が舞台となる。
連ドラ初主演に、上白石は「初めて台本を開いた時、最初に名前があってドキドキしました」と笑みを見せた。
撮影は今年1~3月に行われたが、主演であることを意識することはあまりなかった。主人公・藤野涼子は学校内裁判で検事を務める。上白石は「主人公は、自分が動くというより、誰かが動いてそれを目撃する、ということが多い。裁判シーンは、証言台に立っている人が主役という感じなので、あまりプレッシャーは感じなかったです」と言い「あらためて人のお芝居を『受ける』ことの難しさを感じました。なるべくフラットに揺るがないことを大切にしました」と振り返った。
特別な思いのある作品に出演する緊張感は大きかった。
映画版が公開されたのは中学生の時。前後編の作品を劇場で見たという。上白石は「同世代の役者の仲間達が切磋琢磨(せっさたくま)しているのを見て刺激を受け、悔しいとも思いました」と話した。当時、藤野涼子がオーディションで主役に選ばれ、役名を芸名にしてデビューした。上白石は「その覚悟がすごい、と思っていました」と当時の気持ちを話した。
自分だったらどの役をやりたいかと考えながら見たそうで、やはり主人公の藤野涼子とは一緒に息をのみ、ハラハラしたり、自分を重ね合わせるように見た。今回のオファーには「体に電気が走るような衝撃を受けた」ようだったという。
強い役の難しさもあった。上白石は「自分が演じてきた中で一番、聡明(そうめい)な役。脚本に並ぶ言葉はどれも強いので、言葉に負けないようにしました」。
題材や、学校内裁判で検事を務める役どころも相まって「役を生きている中では相当苦しかったです。役の重みを現実でも抱えていました」と話した。「基本、ハッピーな夢を見ることが多い」そうだが、撮影期間中は、解けない問題をひたすら解き続けて汗だくで起きたり、人が亡くなる夢を見ることもあった。ふと作品の世界を思い出して苦しくなることもあった。初の経験だったが、監督や共演者の明るさに救われ完走できた。
デビュー10年目、自分にしかない色を出していきたいという。以前、学園ものに出演していた時を振り返り「周りの同世代を見て、どうして私はできないんだろうと思い悩むこともありました。でも、生きてきた時間や見てきたものが違えば、表現が違って当然。自分にないものばかりに目を向けていましたが、自分にあるものに目を向けられるようになりました」と、気負いなく語る。
自分の強みを聞かれ、うーんと考えた末、「色がないこと、無色というか…」と話した。以前先輩に、芝居をしていくなら白くいた方がいいよ、と言われたという。「日常生活もごく普通ですし、大学にも通っています。何が『普通』かって言われると難しいですけど、スーパーの袋を両手に抱えて家に帰る、というような時間を大切にしています。学校でいろんな人に会えることも強みかなと思っています」と話した。
10年変わらなかったもの、心掛けてきたことを聞くと、日記、と返ってきた。「デビュー当時からずっと書いています。最初は仕事の内容、会った人、場所、時間だけ、メモのように書いてましたが、今は日記です。寝る前に何も考えずに書き始めるんですが、書かなきゃ分からなかったこともある。『そう書いたか!』って」。ノートは14冊になったそうだ。上白石は「死ぬ前に全部燃やそうと思ってます。すごく恥ずかしいので、忘れないようにしないと」と笑った。
デビュー作「分身」も連続ドラマW枠。上白石は「原点です。20年目もこのような形でお芝居できたら」と話した。【小林千穂】
◆上白石萌歌(かみしらいし・もか)2000年(平12)2月28日、鹿児島県生まれ。11年の東宝シンデレラオーディションでグランプリ、芸能界入り、12年、WOWOW「分身」で女優デビュー。ドラマは日本テレビ系「3年A組 -今から皆さんは、人質です-」、フジテレビ系「教場」など、映画は「羊と鋼の森」「未来のミライ」など。主演作「子供はわかってあげない」(沖田修一監督)が8月公開を控える。舞台は「魔女の宅急便」「続・時をかける少女」など。adieu(アデュー)名義で歌手活動も。都内大学在学中。姉は上白石萌音。