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【ロンドン=池田晋一、ローマ=笹子美奈子】欧州連合(EU)統計局が30日発表した独仏などユーロ圏19か国の2021年1~3月期の実質域内総生産(GDP)速報値は、前期比0・6%減だった。このペースが1年間続くと仮定した年率換算では2・5%減となる。新型コロナの変異ウイルスの感染拡大に伴って長期化している行動制限が響いた。
ユーロ圏のマイナス成長は2四半期連続。1~3月期のGDPが6・4%増(前期比、年率換算)となり回復基調が鮮明な米国や中国などに比べ、欧州経済の正常化には時間がかかりそうだ。
主要国が同日発表した1~3月期の実質GDP速報値は、最大の経済国ドイツが前期比1・7%減、イタリアが同0・4%減だった。フランスは同0・4%増のプラス成長だったが、コロナ禍前の19年10~12月期比では4・4%減と大きく下回っている。
ファッションの中心地として知られるイタリア・ミラノでは、4月下旬に飲食店の屋外営業が解禁されたばかりだ。
「コロナ禍前には1日200人超の来客があったが、この半年間は1桁台。渡航制限が続く限り客足は戻らないだろう」。繁華街の飲食店で働くビンチェンソ・パラディーノさん(37)はため息交じりに話す。
今後の経済成長のカギを握るのが、EUが夏にも加盟国に分配を始める総額7500億ユーロ(約99兆円)の「復興基金」だ。イタリアなどコロナ禍の影響が甚大な国に対し、重点的に配分する。
ただ、各国による基金の使途は欧州委員会などによる審査が必要で、少なくとも2か月かかるとされる。実際に供給される時期は不透明だ。フランスのブリュノ・ルメール経済財務相は4月27日の記者会見で「EUは米中との(景気回復の)競争から取り残されてはならない」と述べ、経済対策の早期実施を求めた。
米英などに比べてワクチン接種のペースが遅いことも課題だ。製薬会社で生産体制の整備が追いつかず、ワクチン供給量が予定を下回ったことなどが影響した。接種が進めば行動制限の緩和につながり、個人消費の拡大などが期待できるが、EUは製薬各社の生産設備増強の支援などに追われているのが実情だ。