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【ワシントン=田島大志、山内竜介】米国のバイデン大統領は28日夜(日本時間29日午前)、米連邦議会の上下両院合同本会議で初めての施政方針演説を行った。新型コロナウイルス対策に最優先で取り組む姿勢を示すと同時に「米国は再び動き出した。危機を可能性と機会に変える」と危機克服に自信を示した。中国への対抗意識も鮮明にした。
新任大統領の演説は、就任翌月の2月に行われるのが通例だが、今回は主にコロナ感染拡大の影響で時期がずれ込み、就任100日目にあたる4月29日が目前のタイミングとなった。
演説では、貿易や経済安全保障の面で中国を強くけん制し、「米国は不公正な貿易慣行、知的財産や技術の窃取に立ち向かう」と強調した。「21世紀を勝ち抜くために中国や他の国々と競争している」とも述べ、半導体、クリーンエネルギーなどの技術開発を強化する考えを示した。
インド太平洋地域で強力な軍事力を維持する方針を中国の習近平(シージンピン)国家主席に伝えたことも明らかにし、「衝突を始めるためではない。防ぐためだ」と主張した。人権問題の提起をためらわない意向も伝えたという。バイデン氏と習氏は2月に電話会談している。
新型コロナ対策を巡っては、「就任100日で1億回」としていたワクチン接種の目標に対し、2億2000万回超の接種を達成したとし、「史上最大の成果の一つだ」と強調した。
コロナで打撃を受けた米経済の再生へ向けた取り組みにも力点を置き、3月に成立した1・9兆ドル(約210兆円)規模の経済対策に関して「米国史上、最も重要な救済策を成立させた」とアピールした。
景気は順調に回復し、加速しているとの認識を示し、「これまでに130万人以上の新たな雇用を創出した。最初の100日間としては、過去のどの大統領よりも多い」と成果を自賛した。
バイデン政権は、本格的な経済再生を目指す手段として、総額4兆ドル規模の長期的な成長戦略を議会に提案している。これについても、演説の中で共和党に協力を呼びかけた。「ウォール街ではなく、中産階級がこの国をつくった」との表現を使い、格差是正を通じて経済全体を底上げする狙いを明確にした。
北朝鮮の非核化やイランの核問題にも言及し、「同盟国と緊密に連携し、外交と抑止力によって脅威に対処する」と表明した。