Microsoft、米音声認識大手を1.7兆円で買収へ 米報道
【シリコンバレー=白石武志】米ブルームバーグ通信は11日、米マイクロソフトが音声認識技術大手の米ニュアンス・コミュニケーションズの買収に向け交渉を進めていると報じた。買収額は約160億㌦(約1兆7500億円)となる見込み。米グーグルなどとの競争が激しい音声人工知能(AI)分野を強化する狙いとみられる。
ニュアンス社はAIを使った音声認識サービスの老舗で、米アップルの音声アシスタント機能「Siri(シリ)」に基盤技術を供給していたとされる。音声AIは人とコンピューターの新たなインターフェース(接点)として重要性が高まっており、アマゾン・ドット・コムなど米IT(情報技術)大手がそろって開発に力を入れている。
買収先となるニュアンス社は米複合機大手のゼロックスから1992年に分社した会社が母体で、米東部のマサチューセッツ州に本社を置く。2020年9月末時点の従業員数は約7100人。医療機関やコールセンター向けに文字起こしや声紋認証などのサービスを販売するほか、マイクロソフトとはこれまで遠隔医療分野への音声認識技術の応用などで提携関係にあった。
ブルームバーグによるとマイクロソフトによる買い付け価格はニュアンス株1株あたり約56㌦となる見込みで、前週末の終値に対し23%のプレミアムを付けたとしている。週内にも合意する見通しだが、交渉は継続中で決裂する可能性もあるとしている。両社からのコメントは得られていない。
マイクロソフトによるM&A(合併・買収)では11年のビデオ通話大手スカイプ・グローバル(ルクセンブルク、買収額は約85億㌦)を上回り、16年に発表したビジネス向けSNS(交流サイト)米リンクトイン(同262億㌦)に次ぐ過去2番目の規模となる可能性がある。
米議会や独禁当局はフェイスブックやグーグルなどの米IT(情報技術)がM&Aによって競争を阻害していないかどうかの監視を強めている。ただ、マイクロソフトは今のところ調査の対象に入っておらず、足元でも積極的な企業買収を続けている。特にAIとオープンソース開発、ゲーム3つの分野について、M&Aによる知的財産や人材の取り込みに力を入れている。
オープンソース開発分野の例としては、18年にソースコード共有サービスの米ギットハブを75億㌦で買収すると発表した。ゲーム分野では21年に人気ゲーム「フォールアウト」などを手掛ける米ベセスダ・ソフトワークスの親会社である米ゼニマックス・メディアを75億㌦で買収する手続きを完了している。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
この投稿は現在非表示に設定されています
(更新)