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つぶらな瞳に大きく踏み出した片足。住宅街で車を運転しているとよく見かけるのが「飛び出し坊や」だ。見慣れた看板だけど「ぎくり」としたら注意散漫のサインかも知れない。設置しているのはPTAや自治会、市町村など。今では場所によって、多くの特徴がみつかる。
どこから来た?
「飛び出し人形」、「飛び出し君」、「飛出とび太君」とも呼ばれる。1973年、滋賀県の社会福祉協議会が看板会社に依頼したのが最初という。「飛び出し坊や」の名が広まったのは2000年以降。読売新聞では09年の記事が最初だった。意外と最近だ。
高知県南部で目撃多数
高知県内では、1970年代から交通安全を呼びかける団体が、県の助成金を使ってイベントをしたり看板を作ったり。「坊や」に目をつけた団体もあり、2011年以降では県内で計約430体が購入されていた。8割超の約370体は南国、香南両市が注文している。
確かに子どもは多い。両市の小学生の数は県内ではそれぞれ2位、3位(19年度)。小学校入学を機に親や祖父母が要望する。交換のサイクルも早く、一度に複数の交換を求める地区もある。それにしても2市で年間30~70体は多い気がする。
小学生が最多の高知市は、県市の助成金を使った購入実績はゼロだ。担当者の評価は「風に飛ばされたり人に当たったりして傷みやすい」と辛口だった。同市は「とまれ」と記したシートを路上に貼り付ける方式が中心になっている。
南国市では予備の「控え坊や」もいて出番を待っている。なぜそこまで手厚いのか。「細く入り組んだ道が多いから」との声がある。南国、香南両市は「立体的で視覚的効果が高い。運転手も子どもが多い地区とすぐにわかる」としている。
実際、死亡事故はあるのか。少子化の流れもあって一概に言えないが、県警によると11年以降に南国、香南両市で、子どもの歩行者が交通事故で命を落とすケースはなかった。
心理的効果は?
最近はネット販売で1万円以内で買える。個人負担で設置する人もいる。南国市の中村公穂さん(49)は住宅の敷地に置く。長男が自宅前の道路に飛び出すことが多かったためだ。「運転手だけでなく、子ども自身が注意するきっかけにもなった」
金城学院大の
「気をつけておじさん」求む!
昭和生まれの「坊や」も50歳近くになった。おりしも県内では中高年の水路への転落事故が続いている。これといった対策は取られておらず深刻だ。ここはぜひ頼りたい。今度はひげをたっぷり蓄えた「気をつけておじさん」になってみんなを守ってくれないかしら。(高知支局・北島美穂)
発祥の地、長く愛される理由…今では「道祖神」に
一方、発祥の地とされる滋賀県東近江市では、飛び出し坊やは町の風景の一部となり、デザインの多様化も進む。