新型コロナ

ワクチン足りない! EU、供給削減に怒る 

 【パリ=三井美奈】欧州で新型コロナウイルスのワクチン供給が逼迫してきた。米大手製薬会社ファイザーと英製薬大手アストラゼネカが相次いで、欧州連合(EU)への供給削減を発表した。接種計画の見直しを迫られる国もあり、ミシェルEU大統領は24日、仏ラジオで製造元に契約順守を求め、「法的措置も辞さない」構えを示した。

 ファイザーは15日、欧州での供給の一時削減を発表。ワクチン増産に向けてベルギー工場の生産ラインを見直すための措置だとしており、供給正常化は25日以降になるとした。

 アストラゼネカについては23日、欧州委員会が通告を受けたと発表し、「不満」を表明した。同社のワクチンは今月末、EUで販売が認可される予定で、欧州委が各国に配分計画を示していた。3月までのEUへの納入分は計画の4割程度になる見込みという。

 イタリアのコンテ首相は「アストラゼネカのワクチンは国内に800万回分が納入されるはずだったのに、340万回分になる」とフェイスブックに見通しを示し、接種計画に影響が出ると懸念を表明した。「重大な契約違反。国民の生命がかかっている」として、同社に法的措置をとる構えも示した。

 イタリアは、ファイザーについても提訴する方針を示している。ポーランド政府報道官も地元ラジオで、来月にも製造元への提訴を検討すると述べた。

 一方、ハンガリー政府はEUを通じたワクチン購入では遅すぎるとして、国内に限り、EU加盟国で初めてロシア製ワクチン使用を暫定認可することを決めた。シーヤールトー外務貿易相が22日、ロシア訪問中に、200万回分のワクチン購入に関する合意を交わした。

 ドイツではシュパーン保健相が「効果が確認された」として「モノクローナル抗体」を使った治療薬を20万回分購入すると表明した。この種の治療薬は昨年、トランプ米前大統領が新型コロナに感染した際にも使われた。症状悪化を食い止める効果があるとされ、ドイツでは当面、大学病院での使用を想定しているという。

 EUでは昨年末、ファイザーのワクチンが最初に承認され、域内各国で接種が始まった。現在は米バイオ企業モデルナのワクチンと合わせて2種が承認され、各国で接種キャンペーンが展開されている。

 欧州委は「夏までに成人人口の7割」を目標に掲げ、製造元各社と計23億回分のワクチン購入に合意していた。このうち、ファイザーは6億回分、モデルナは1億5千万回分、アストラゼネカは4億回分を占める。EUのワクチンは欧州委が一括購入し、加盟国に配分している。

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