ザッカーバーグ氏を公民権団体が非難 トランプ氏の投稿放置

ゾーイ・クラインマン、テクノロジー記者、BBCニュース

Mark Zuckerberg

画像提供, Getty Images

フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)がドナルド・トランプ米大統領の投稿を表示したままにし、「危険な前例」を作っていると、公民権擁護団体が警告している。

トランプ大統領は先に、白人警官に膝で首を押さえつけられた黒人男性が死亡した事件を受け、米ミネソタ州ミネアポリスで抗議デモが相次いでいることについてフェイスブックに投稿。略奪者を「ごろつき」と呼び、「州兵を送り込む」と書いた。さらに「略奪が始まれば、発砲が始まる」と警告した。

ザッカーバーグ氏がこの投稿を表示したままにすると判断したことについては、フェイスブックの従業員からも怒りの声が上がっており、一部では「仮想ストライキ」が起きている。

ザッカーバーグ氏はこれまで、トランプ氏の発言内容には反対だが、「人々がこの発言を見られるようにしておくべきだ」と、自身の判断を擁護していた。

<関連記事>

しかしこれに対し、3つの公民権擁護団体の指導者が反発。ザッカーバーグ氏とビデオ会談を行った後に共同声明を発表した。

声明では、「ザッカーバーグ氏の、トランプ氏の投稿を表示させ続けていることへの理解し難い説明に失望し、あぜんとしている」と説明。

「ザッカーバーグ氏は、歴史上あるいは現代の有権者抑制についての理解を示さず、抗議者に暴力を使うというトランプ氏の発言をフェイスブックがどのように助長させているかも認識しようとしなかった」

「マーク(ザッカーバーグ氏)は、フェイスブックで同様の有害な発言するかもしれない人たちのために、非常に危険な前例を作ろうとしている」

「正しい判断」と弁明

ニューヨーク・タイムズによると、ザッカーバーグ氏は2日に社内でオンライン会議を開き、質疑応答形式で従業員に自身の判断を擁護したという。

ザッカーバーグ氏はこの会議で、自分は「難しい選択」を迫られたが、フェイスブックの言論の自由の原則にのっとり、トランプ大統領の投稿を表示したままにしたのは「正しい判断」だったと述べた。

しかし一部の従業員からは、ザッカーバーグ氏が共和党の反応を恐れてこうした判断に至ったとの指摘があった。

1日に発表された共同声明には、公民権・人権リーダーシップ会議のヴァニタ・グプタ会長、全米有色人種地位向上協議会(NAACP)法的防衛・教育基金のシェリリン・アイフィル会長、カラー・フォー・チェンジのラシャド・ロビンソン会長の3人が署名した。

一方フェイスブックの広報担当者は、「公民権運動の指導者たちがマークとシェリル(サンドバーグ最高執行責任者)と、偽りのない率直なフィードバックを共有してくれたことに感謝している」と述べた。

「今は話を聞くべき大事な時で、これからもこうした会話を続けるのを楽しみにしている」

フェイスブックと契約打ち切る企業も

オンラインでメンタルヘルス(心の健康)のセラピーを提供している「トークスペース」は、フェイスブックがトランプ氏の投稿を残している実態を受け、同社とのパートナーシップを打ち切ると発表した。

オレン・フランクCEOはツイッターで、「暴力や人種差別、うそを増長させるプラットフォームは支持しない」と述べた。CNBCの取材では、フェイスブックとの契約は「数十万ドルもの価値」があったと話している。

また、フェイスブックの元幹部バリー・シュニット氏は同社の従業員に対して公開書簡を発表。過去にフェイスブックの言論の自由に対するアプローチを擁護していたのは間違いだったと話した。

「言論の自由の促進が、難しい選択から逃げ出すことと同義になってはいけない」

米メディアが入手した流出した音声によると、ザッカーバーグ氏はトランプ氏の投稿に対して当初、「うんざりだ」と語っている。

音声では、ザッカーバーグ氏が「こうした状況下で国のトップに見せてもらいたい姿ではない」と話しているのが聞き取れる。