完了しました
【ニューヨーク=小林泰明】米国のIT企業や金融大手で、新型コロナウイルスの感染防止で定着した在宅勤務を長期継続しようとする動きが広がっている。新型コロナ収束後の「ニュー・ノーマル」(新しい日常)を見据えた取り組みだ。
フェイスブック(FB)のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は21日の従業員向けの動画で、「新型コロナウイルスは我々の生活を大きく変えた。私たちは(自宅などで仕事をする)リモートワークに最も前向きな会社になる」と述べた。在宅勤務を前提とした従業員を積極的に採用する一方、既存の従業員は在宅勤務を長期的に継続できるようにする方針も示した。
FBでは現在、約4・8万人の従業員の大半が在宅勤務中で、5月上旬には希望する従業員に年末までの在宅勤務を認めた。今回の取り組みを進めると、5~10年後には半数が在宅勤務になる可能性があるという。ザッカーバーグ氏は「将来の重要な技術を進歩させる機会が得られる」としており、在宅勤務の推進は仮想現実(VR)など関連サービスの開発に弾みをつける思惑もある。
ツイッターは5月中旬、約5000人の従業員を対象に、希望する人には永久的に在宅勤務を認める方針を発表した。6月にも世界で多くのオフィスを再開する予定のグーグルは「大半の従業員は年末まで在宅勤務をする可能性がある」としている。自由な社風の企業が多いことで知られる米西海岸のIT企業で在宅勤務が加速している。
一方、東海岸のニューヨークに本拠を置く金融大手でも在宅勤務の長期化が広がり始めている。
世界で18万人を超える従業員が在宅勤務をしている米金融大手JPモルガン・チェースは5月中旬、従業員向けのメモで、オフィスで働く従業員をこれまでの半分以下に制限する必要があることを明らかにした。感染を防止する社会的距離を確保するためだ。座席配置の変更にも言及し、オフィスの勤務も大幅に変わることを強調した。
米金融大手モルガン・スタンレーのジェームス・ゴーマンCEOは21日の株主総会で、現在、従業員の90%超が在宅勤務をしているとしたうえで、年末までにオフィスに戻る従業員は50%近くにとどまるとの見通しを示した。
もっとも、コロナ収束後の勤務のあり方を巡っては、対面による仕事の重要性が再認識され、オフィスの重要性がさらに高まるとの見方もある。在宅勤務をどこまで広げるかは試行錯誤が続きそうだ。