告発運動の起爆剤となる。執筆したのはニューヨーク・タイムズ紙の調査報道記者、ジョディ・カンターとミーガン・トゥーイー。彼女たちの著書『その名を暴け
—#MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い—』(新潮文庫から翻訳あり)に基づき、取材から記事発表までの経緯を描いたのが本作である。ワインスタインの悪行についてはすでに文字で読んでいたにもかかわらず、こうして再度証言者(もちろん俳優が演じています)の声で描写されると、あまりのおぞましさに筆者は途中で叫び出しそうになってしまった。いや、筆者のリアクションのことはともかく、性加害が被害者にどれほどの傷を残すか、その後の人生をどれほど変えてしまうか、あらためて実感させられる。すでにこの事件について詳しく知っている人も、これを観ることでまた新たに考えさせられることがあるだろう。そしてもちろん、ご存知ではない人はなおさら観るべきだろう。先ほど「声で描写」と書いたが、犯行の様子そのものが映像で描写されることはない。もしそのような描写があったなら、この映画は、性犯罪を娯楽として搾取するかのような、まったく異なる性格のものになってしまっていたかもしれない。作品の意図にかなった、極めて正しい判断だと思う。さて、ジョディ・カンター(ゾーイ・カザン)とミーガン・トゥーイー(キャリー・マリガン)は、ワイ
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ハリウッドの性的暴行事件追う女性記者たち 映画評5本ラインアップ「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」「モリコーネ 映画が恋した音楽家」「紫~MURASAKI~ 」「そして僕は途方に暮れる」「ひみつのなっちゃん。」SHE SAID/シー・セッド その名を暴け米映画界の性的暴行事件 渡辺祥子(映画評論家)2017年、米・ニューヨーク・タイムズ紙にMeToo運動を大きく前進させることになった大物映画製作者ハーヴェイ・ワインスタインによる性的犯罪事件の衝撃的スクープ記事が掲載された。「恋におちたシェイクスピア」(1998年)、「英国王のスピーチ」(2010年)など、数々の名作を送り出したミラマックス社の製作者による数十年に及ぶ性的暴行事件や隠ぺい工作を告発したその記事はピュリツァー賞を受賞した。この記事を綿密な取材と被害者への誠実なインタビューで書いたのがニューヨーク・タイムズの調査報道記者2人。娘2人を育てるジョディ・カンター(ゾーイ・カザン)と娘を出産して間もないミーガン・トゥーイー(キャリー・マリガン)。彼女たちは権力を持つ立場を利用した男の性的暴行の噂を聞いて調査に乗り出し、ときにママ友同士のような会話を交わしながら取材を重ねていく。この記事による本、『その名を暴け MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い』(新潮社刊)を原作にテレビ出身のマリア・シュラーダーが監督して映画化。2人の記者が話を聞いた人々の体験を刺激的に煽(あお)ることもなく、クールで冷めた映像に仕立てているのが心に残る。俳優たちの被害が数多く浮かび上がる中、女優のアシュレイ・ジャッドが実名を出して本作にも出演。被害者は俳優たちだけでなく、ミラマックス社の従業員にもいる。希望に満ちて映画製作の現場に足を踏み入れた若い娘に待っていたハリウッドの大物製作者の犯罪。告発を受けるワインスタインの側は、大金の支払いで鉄壁の秘密保持契約書を書かせ、沈黙を強要するなど法律はないも同然。記事が出る直前、ワインスタインが弁護士を引き連れてニューヨーク・タイムズ社に乗り込んでくるシーンの記者の白けた表情が印象的だ。彼女たちには編集局次長やニュース統括の編集長がついていて的確に指示を出し、部下を守る。どこまでも冷静に。その姿勢に見惚(みと)れた。2時間9分。★★★★★モリコーネ 映画が恋した音楽家巨匠自ら語る音作りの裏側 林瑞絵(映画ジャーナリスト)幕開けはメトロノームの響き。仰向けで腕を伸ばし、体操をする老紳士。机上では楽譜に鉛筆を走らせる。誰かが言う。彼はアスリートだと。2020年に91歳で旅立ったイタリア人エンニオ・モリコーネ。60年にわたり第一線で活躍し、アカデミー賞では名誉賞を獲得。比類なき作曲家人生は、そのままで豊かな映画音楽史となっている。撮影期間は2016年から亡くなる数カ月前まで。監督はジュゼッペ・トルナトーレ。「ニュー・シネマ・パラダイス」(1988年)でタッグを組んで以来、モリコーネとは近しい仲。その安心感に包まれ、巨匠は自分史を語り出す。父の影響でトランペット奏者を志した子供時代。作曲は名門音楽院で学んだ。卒業後はレコード会社の専属編曲家に。やがて映画音楽の仕事も請け負うが、その発展途上の世界に音の新風を送り込む。
ソース: nikkei - 🏆 135. / 51 続きを読む »