2022年6月14日には、宮城県内の幼稚園の門へ、運転を誤ったと見られるポルシェ「911」が突っ込んだという報道がありましたが、この事故を報じた大手マスメディアは911という車種名まで報じてはいないようです。この事件でも報じた大手マスメディアのほぼすべてが「マセラティ」というブランド名を見出しに用いている一方で、「ギブリ」という車種名まで報じている例は皆無です。
いずれにせよ、ポルシェだから運転を誤ったもしくは、マセラティだから盗難あるいは暴走したという事実はなく、マセラティやポルシェの愛好家や関係者からすれば、望まない形でその名が知れ渡ってしまうことになってしまったといえるでしょう。この盗難車はトヨタ「ランドクルーザープラド(150系)」と見られますが、この事件を報じた大手マスメディアのなかに「ランドクルーザー」あるいは「ランクル」「プラド」の文字を見出しに掲げた例は見つかりません。ただし、数年前までは国産車でも具体的なブランド名や車種名が挙げられるケースも見られました。 例えば、2019年4月に起こった池袋の暴走事故では、被告が暴走の原因をクルマの不具合によるものであるという主張をしたことから、被告が運転していたトヨタ「プリウス」の名が大々的に報じられることになりました。しかし、実際にプリウス自体に問題があったというよりは、そもそもの販売台数が多いことや、幅広い世代(とくに年配層に支持されていた)という要因が大きかったようです。全体の傾向としては、輸入車はブランド名で表現されるか、もしくは「高級輸入車」や「高級スポーツカー」などという高価な輸入車であることを強調したような表現が用いられることが多いようです。個々のケースについては、各報道機関の姿勢があるためここで詳しく触れることはしませんが、全国の新聞社や通信社、放送局によって構成された「日本新聞協会」が2022年3月に発表した「実名報道に関する考え方」という声明は、この件を理解する助けになるのではないかと考えます。そこでは「名前は、犠牲者への共感を生み、事件を他人事と思わせず、再発防止に向けた制度の改善などの議論を促す力になると考えており、そうした例も数多くあります」と述べられています。
輸入車はまだ百歩譲って理解し得るにせよ、「プリウス」が特定の“意図”を以てのものである事は明白。 プリウスは悪くない
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