』で知られる進化生物学者のリチャード・ドーキンスが定義した「ミーム」とは、人間から人間へと模倣されながら文化を形成していく情報のことだ。わたしたちは日々、戦時下であれ日常であれ、インターネットを流れるミームにまみれて暮らしている。
21世紀において人類の文明をかたちづくる最大のミームが何かといえば、いまのところそれは、「持続可能な開発目標(SDGs)」だろう。ただし、人口に膾炙され模倣が繰り返されるなかで、そこでは大事な問いが抜け落ちてしまった。つまり、「何を」持続させるのかという視点だ。 今回、『WIRED』日本版とNTT Communicationsが運営するOPEN HUB for Smart Worldが開催するWIRED Green Loungeのトークセッションは、この問いから始めたい。未来に向けて新たなコンセプトを創り、社会実装を目指す事業共創の場であるOPEN HUBでは、エネルギー脱炭素化のためのGX(グリーントランスフォーメーション)に積極的に取り組んでいるからだ。
その上で、テクノロジーを適切に利用して気候危機を乗り越えようとする「エコモダニスト」たち(『WIRED』もしばしばそう呼ばれる)はいまや、技術的な解決がけっきょくは現在の過剰な消費社会や、利便性と自然のトレードオフ、つまりは人間中心主義の文明を温存して“持続可能”にするのではないかと自問自答するタイミングに来ている。そのために召喚されたのが、「1万年」単位で考える視座だ。 当たり前のことだけれど、地球は日々動き、変化し、活動している。「生環境構築史」の提唱者のひとり松田法子は、地上でヒトが自らの生存環境を構築してきた長い歴史とその様式(モード)の変遷を探ってきた。いまわたしたちが立っているのは、地球の自律的な運動が人間にとって「最大級の災害」となり衝突する局面だ。その調和を図るべく松田が提示する文明の次の構築モードは、人間の尺度ではなく地球の尺度で人間の活動を捉え直す契機を与えてくれる。
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