俳優、佐々木蔵之介がプロデュースする演劇ユニット「Team申」の11年ぶり本公演のタイトルは、「君子無朋」と書いて「くんしにともなし」。漢文の授業を思いださせるタイトルに「中国史に興味がない人には取っつきにくいのでは」と思ったが、それは杞憂(きゆう)だった。
物語は18世紀の中国・清王朝の第5代皇帝、雍正帝(ようせいてい、佐々木)の実像を描く。45歳で皇帝の地位につき、13年間の治世を働き詰め、過労死したとも伝えられる。その真の姿が、皇帝への謀反を企てようとした若き地方官、オルク(中村蒼)とのやり取りで浮かび上がる。 脚本の阿部修英は、佐々木が出演した中国王朝を取り上げたドキュメンタリー番組を担当したテレビディレクター。初の戯曲執筆となったが、登場人物をぎりぎりまで削り、謎ときのような練られた構成で「中国史上もっとも孤独な暴君」の姿をひもといた。何より、俳優人生初の弁髪姿で、多くの観客になじみのない人物を生き生きとよみがえらせた佐々木が光る。番組で出合った雍正帝に心ひかれ舞台化を主導しただけあって、人物像を徹底してつくり込み、その魅力を余すことなく伝えている。パワハラを連発しながらもユーモラスさをのぞかせ、間の取り方、緩急の付け方で周囲を翻弄していくさまは、佐々木の根っこが「舞台」にある証左だ。
対するオルク役の中村は、若者らしい真っすぐな演技がいい。雍正帝からの「圧」や「刃」におろおろする姿に感情移入して見ていると、雍正帝がなぜオルクを〝選んだ〟のかが理解できる。陰謀うずまく世界で孤独に生きる雍正帝にとって、オルクの存在こそ光だったのだろう。なぜ佐々木が歴史的には無名に近いこの人物を主役に据えて芝居を作ろうと考えたのか、なぜ「君子無朋」をタイトルにしたのか。悪逆非道な暴君の真の姿にせまるうち、「君子無朋」の意味が明かされる。 国をつかさどる者は、「今」に友を作ってはならない。あくまで雍正帝の信念であるそれは、決して押しつけがましく余計なメッセージを付け加えたりはしない。それだけに、混迷の時代に生きるわれわれに、突き刺さるのである。
チャンコロの茶番劇(笑)
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ソース: Sankei_news - 🏆 68. / 53 続きを読む »