【鑑賞眼】宝塚歌劇団宙組「プロミセス、プロミセス」 不倫劇もハッピーに

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【鑑賞眼】宝塚歌劇団宙組「プロミセス、プロミセス」 不倫劇もハッピーに 何より喜劇に欠かせない会話の呼吸、間合いが劇団ならではチームワークでテンポよく、ドロドロの不倫劇も軽やかに見せたのが大きい。

端的に言うと、ニール・サイモンによる社内不倫劇である。現代の基準ではセクハラ、パワハラと受け取れる場面も散見されるのだが、そこは演出の原田諒と適材適所の出演者の手腕。絶妙なバランス感覚で、現代人も受けいれられる喜劇に仕立て、ハラハラさせつつ最後はハッピーエンドで幕、である。楽しみつつ、すっかり感心させられた。

米国で「喜劇王」とたたえられるサイモンが、ビリー・ワイルダー監督の映画「アパートの鍵貸します」をベースに脚色、ミュージカル化した作品。1968年のブロードウェー初演では、1281回のロングランを達成し、2010年にもリバイバル上演された。1960年代のニューヨークで働く、保険会社のまじめなサラリーマン、チャック(芹香斗亜=せりか・とあ)が、上司たちの不倫場所として自分のアパートの鍵を渋々貸し出し、それを出世の手がかりにする-という物語だ。 お人よしで、会社でも目立たない主人公チャックは、宝塚の男役スターには難しい役柄だ。思いを寄せる社員食堂のフラン(天彩峰里=あまいろ・みねり)には相手にされず、しかも彼女と人事部長シェルドレイク(和希そら)との不倫関係も判明。彼に「アパートの鍵」を貸したばっかりにクリスマスの夜中、自室に帰ったら、自殺未遂を図ったフランの介抱までする羽目に…。

いわば周囲に翻弄される〝受け〟の芝居が続くのだが、だからこそ男役15年の実力派、芹香が本領を発揮。いつものオーラを消し去り、目を白黒させ上ずった声で、押し寄せるトラブルに全身全霊で対応する姿が笑いを誘う。不倫の修羅場や、身勝手な保身に走るシェルドレイクら上司たちの嫌らしさも、この芹香の陽性の持ち味が、後味悪くなく見せる効果があった。何より喜劇に欠かせない会話の呼吸、間合いが劇団ならではチームワークでテンポよく、ドロドロの不倫劇も軽やかに見せたのが大きい。

 

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