「日本柔道の花形」と形容される男子最重量級にフランス人の絶対王者が君臨している。100キロ超級でオリンピック(五輪)2連覇、世界選手権8連覇のテディ・リネール(30)だ。このほど、日刊スポーツの取材に応じ、国際大会152連勝中の「負けない柔道家」が、3連覇を狙う20年東京五輪への思いを語った。【取材・構成=峯岸佑樹】絶対王者に「柔よく剛を制す」という言葉は当てはまらない。203センチ、150キロの巨体ながら、俊敏さを兼ね備える。その肉体はまさに筋肉の塊だ。リネールは、3連覇を狙う東京五輪へ並々ならぬ決意を口にした。「柔道の故郷で必ずタイトルを取る。今からドキドキしている。残りの準備期間で100~150%の状態にして、目標を達成してみせる」。
「常に全力」という言葉を大切に、勝利への異常な執念を持つ。「勝つことが大好き。全てのことで勝ちたい」。根っからの負けず嫌いで、子供相手のテレビゲームやじゃんけんでも勝ちにこだわる。柔道では絶対王者として、稽古でも試合を想定して「1度も背中を畳につけない」と決めている。国際大会や合宿には、専属コーチやトレーナーらを帯同させ「チームリネール」となって世界中を駆け回る。合宿では乱取りの他、ジュニア時代から指導を受ける体重60キロのシャンビリーコーチと素早い組み手や寝技強化に励み、それ以外は独自の筋力トレーニングに時間を費やす。137キロをベスト体重とするが、16年リオデジャネイロ五輪後の長期休養でケーキを食べ過ぎて165キロまで増量。それ以降は、栄養士に徹底した食事管理を受け、肉体改造に取り組んでいる。年齢を重ね、柔道との向き合い方も変化した。「頭脳が大きな武器になっている。体力が衰えても周りは『強い』と評価するが、自分では『強くない』と感じている。今は常に勝つための最善策を逆算して考え、これまで以上の稽古に励んでいる」。
○…リネールは、意外な顔を持つ。競技引退後を考え、17歳でパリを拠点とするスポーツビジネス会社を起業。スポーツマーケティングを学ぶ学校も開校し、経営者としても活躍する。欧州での大会では、時短のためヘリコプターをチャーター。柔道を「最優先」とするが、「ボス(=社長)とパパの仕事もあるから忙しいよ」。フランスでは、最も影響力のあるスポーツ選手で1位に輝いたこともあり、レキップ紙が昨年4月1日のエープリルフールに「リネール柔道引退。ラグビーに転向」と報道して、大きな反響を呼んだ。
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