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トップ「不在」の英、コロナ対策に影響 ジョンソン首相容体悪化

 【ロンドン=板東和正】新型コロナウイルスに感染したジョンソン英首相の症状が悪化し、政府の対応を主導することが困難になった。ウイルス対応を指揮してきた政府トップが「不在」になったことで、英国の新型コロナ対策に悪影響を及ぼす恐れが高まった。

 ジョンソン氏は新型コロナに感染した後も、テレビ会議を通じたテレワークで感染症対策の会議を取り仕切り、指導力を発揮してきた。ツイッターで動画を投稿し、国民に新型コロナの感染を防ぐために自宅待機するよう呼びかけたが、顔色が悪いとの声が出ていた。さらに、ジョンソン氏が5日に検査入院した際には、一部の英メディアが「(ジョンソン氏が)酸素吸入を受けたとみられる」と報じ、呼吸困難の症状が出ていることも心配されていた。

 ジョンソン氏が集中治療室に移された一報を受けて、英BBC放送は6日、「首相の病気がいかに深刻であるかを明確に示している」と報じた。与党・保守党の元議員も「ジョンソン氏は治療に専念しなければならず、しばらくは政府を主導する役割を担えないだろう」と予想する。

 ジョンソン氏が首相の任務を務めることが難しくなったため、ラーブ外相が新型コロナ対策の指揮を執ることになった。

 英政府は先月23日に開始した外出制限について、3週間ごとに緩和するかどうかを検討する方針だ。緩和するか否かの判断を下すには、ハンコック保健相とスナク財務相の意見を聞いた上で、感染拡大のリスクと経済的な影響をてんびんにかける必要がある。だが、英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は6日、保守党関係者が「健康と経済について、いかにバランスをとるかについての判断は首相にしかできない」と話していると報じた。

 ジョンソン氏は各閣僚の主張を調整する能力にたけているとされ、ラーブ氏に同様なことができる保証はない。保守党支持者は「調整できるトップがいなくなることで、政権内の権力闘争が激しくなることもありえる」と予測。政府内で混乱が生じることが早くも懸念されている。

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