プロ野球選手として果たすべき使命には、こんな形もある。高卒3年目の長身右腕、日本ハム田中瑛斗投手(20)は、今年1月、帰省先の大分県中津市で小児病棟に足を運んだ。「小さい頃、ぜんそくでよく入院していた」場所。恩返しの気持ちを込め、プロ入りした昨オフから慰問活動を始めた。「子どもの笑顔を見て、逆に僕が頑張ろうという気持ちになる」。モデル体形に甘いマスクを備えたスター候補は、切れ長の目をうれしそうに細めた。

昨年8月、病院訪問で仲良くなった重い脳障がいと闘う宮城大翔(たいが)君が、わずか5歳で帰らぬ人となった。「北海道まで投げる試合を見に行くね」。待望の1軍デビューは、9月の昨季最終戦。約束を果たせなかった。年が明けて今月10日、大翔君の誕生日の前日、ようやく仏壇に手を合わせることができた。遺影の周りに飾られた背番号46のグッズの数々に、胸が熱くなった。

昨秋、プレミア12を控えた侍ジャパンとの練習試合で先発に抜てきされた有望株だ。「プロ野球選手だから、できることもある。(将来的に)他の社会貢献も考えたいし、病院も1カ所だけでなく、2、3カ所と訪問したい。でも、結果を残せるようにならないと説得力がない」。いつか、高校の大先輩で米球界に挑戦するブルージェイズ山口のようになれたら。

まずは、プロ初勝利を。星になった小さな友人に、誰からも尊敬される大投手になることを誓った。【中島宙恵】